米国LLCを設立し、EINも取得してドル口座もある。それでもShopify PaymentsからSSNの提出や、米国内にオフィスがあることの証明を求められる - そんなケースは珍しくありません。この記事では、非居住者がオーナーの会社に対してShopifyが具体的に何を求めるのか、申請がどこでつまずきやすいのか、そしてShopify Paymentsがどうしても使えない場合に何を導入すればよいのかを解説します。

STEP 01米国内に事業の実態があるか、正直に見極める

申請前にまず押さえておきたいのは、Shopify PaymentsはLLCそのものだけでなく、事業が実際にどこで運営されているかも確認するという点です。デラウェア州やワイオミング州で会社を登記しただけでは足りません。

Shopifyのフォーラムのスレッドでは、2023年11月にサポート担当者が「その地域で物理的に事業活動をしていることを証明できる必要がある」とはっきり回答しています。例として挙げられたのは、店舗、従業員、賃借または自社所有の倉庫です。

2024年3月の別のスレッドでも、サポートの回答は同じでした。オフィスなど米国内での物理的な事業運営がない場合は、外部の決済プロバイダーを選ぶ必要がある、というものです。

アルマトイやトビリシからストアを運営していて、米国にあるのは登録代理人(Registered Agent)だけという場合、承認の見込みは高くありません。何週間も返事を待つより、それを前提に最初からプランBを準備しておくほうが得策です。

STEP 02シングルメンバーLLCとマルチメンバーLLCで求められるもの

基本的な提出物はどちらのタイプでも同じです。フォーラムでのShopifyサポートの説明によると、必要なのは次のとおりです。

  • 事業登録の証明 - IRSから届くSS-4またはCP 575のレターで、会社の正式名称、EIN、住所が確認できるもの
  • 写真付き身分証明書 - アカウント代表者と外国人オーナーのもの。パスポートが望ましい
  • 米国の銀行口座 - 入金の受け取り用
  • Shopifyアカウントの2段階認証 - これを有効にしないとShopify Paymentsはオンにできません

シングルメンバーLLC。オーナーが1人で非居住者の場合、会社は通常、税務上「みなし無視事業体」(disregarded entity)として扱われます。NVincの専門家は、このようなLLCが提出すべき税務フォームはW-9ではなくW-8シリーズだと指摘しています。フォームと会社の実際のステータスが食い違うと、1099-Kの報告で問題が生じます。ご自身のケースでどのフォームを記入すべきかは、税理士に確認してください。

マルチメンバーLLC。この場合、Shopifyは共同オーナーの情報も求めるため、SSNを持たないオーナーがいれば、その一人ひとりが新たなハードルになります。2024年12月のスレッドでは、パートナーシップ型LLCのオーナーたちが、SSNのない非居住者の共同オーナーがいたことが原因で申請を完了できませんでした。このスレッドには結局、公式の回答はつきませんでした。

年次報告についても触れておきます。外国人オーナー1人のLLCは通常、pro formaのフォーム1120と一緒にフォーム5472を提出します。NVincによると、未提出のフォーム1件につき罰金は25,000ドルです。これはShopifyの要件ではありませんが、税務フォームに不備がある会社は審査担当者の目に留まりやすくなるかもしれません。

STEP 03SSN、ITIN、パスポート: 何がどんなときに有効か

ここがいちばん意見の分かれるポイントで、Shopifyのフォーラムでさえ統一された答えはありません。確実に言えるのは次のことです。

事業用のEINは必須です。会社の納税者番号の欄に入力します。EINがなければ申請はできません。

代表者のSSNまたはITIN。2024年3月、Shopifyのスタッフは「米国の販売者は、事業にEINがあってもSSNまたはITINを入力する必要がある」と書いています。非居住者は、IRSにフォームW-7を提出すればITINを取得できます。ITINでこの欄は埋まりますが、米国内での実態の問題は解決しません。オフィスや倉庫がなければ、STEP 01で説明した審査で申請が止まる可能性があります。

パスポート。Shopifyから本人確認を求められたときにアップロードします。通常は管理画面に黄色または赤のバナーが表示されます。フォーラムのある販売者は、EINとパスポートで自動登録は通ったものの、手動審査で米国内での実態を証明するよう求められたと報告しています。パスポートは本人であることの証明にはなりますが、SSNやITINの代わりにはならず、事業が米国で運営されていることの証明にもなりません。

外部ゲートウェイしか選択肢がないのは、SSNもITINもなく、米国にオフィスも倉庫も従業員もない場合です。この状況への不満は2024年から現在まで続いていますが、サポートはこうしたケースでは外部プロバイダーを案内しています。

注意他人のSSN、知人の住所、名義だけの米国人「ディレクター」を記載するのはやめましょう。審査で情報が一致しなければ、Shopifyはすでに発生した入金を保留する可能性があり、いったんそうなると審査から抜け出すのは非常に困難です。最初から自分の会社名義で外部ゲートウェイを導入するほうが賢明です。

STEP 04住所・銀行口座・書類: 審査落ちが多いポイント

形式上すべて記入していても、申請が却下されたり入金が保留されたりする理由は、たいてい決まっています。

住所

NVincの経験では、登録代理人の住所、バーチャルオフィス、私書箱、郵便転送サービスは米国内での実態とは見なされません。認められるのは、会社名義で契約した倉庫や店舗スペース、従業員のいるオフィスの賃貸です。フルフィルメント倉庫(3PL)との契約で通る場合もありますが、契約内容やサービスの形態によって結果は変わります。

銀行口座

  • 口座は個人名義ではなく、LLC名義で開設されている必要があります。受取人名と会社名が一致しないと、審査に通らないことがあります。
  • Shopifyが入金先として受け付けるのは、お住まいの国の要件を満たす当座預金(checking)口座です。
  • NVincによると、Payoneerは審査が厳しめで、MercuryやWiseのドル口座は比較的通りやすく、最も承認されやすいのは従来型の米国の銀行の口座だそうです。これは実務家の経験則であり、Shopifyの公式ルールではありません。

書類

  • 申請書の会社名、EIN、住所は、CP 575のレターと一字一句同じにしてください。
  • CP 575の原本をなくした場合は、EINの証明なしで申請するのではなく、IRSに147Cレターを請求してアップロードしましょう。
  • パスポートは有効期限内のものを使い、スキャン画像は端が切れておらず、はっきり読める状態にしてください。
ヒント申請前に、LLCの運営契約書(Operating Agreement)、CP 575(または147C)、銀行の取引明細書、パスポートを手元にそろえ、4つすべてで会社名、住所、オーナー名が一致しているか照らし合わせてください。「原因不明」の審査落ちの多くは、1文字の違いや住所の書式の違いによるものです。

なお、Shopifyは承認後にもアカウントを再審査することがあります。導入時に入力した情報は、半年後も事実であり続ける必要があります。

STEP 05プランB: Shopify Paymentsの代わりに導入できるゲートウェイ

Shopify Paymentsが使えなくても、外部プロバイダー経由でストアを始めることはできます。デメリットはひとつだけで、プロバイダー自体の手数料に加えて、Shopifyが外部ゲートウェイ利用の手数料を差し引くことです。2026年の料金プランのレビューによると、Basicで2%、Growで1%、Advancedで0.6%、Plusで0.2%です。ご利用のプランの最新の料率は、管理画面のSettings → Paymentsで確認してください。

米国LLC名義のStripe

LLCを持つ非居住者にとって、最も一般的な選択肢です。NVincによると、Stripeは承認が早く、開始時に求められる書類も少ない一方で、運用を始めてからアカウントが凍結されるケースが多いとのことです。米国のストアでは通常、Stripeを決済ゲートウェイとして直接接続することはできないため、アプリや外部チェックアウトを通じて組み込みます。具体的な方法はStripeとShopifyの連携についての記事で解説しています。アカウントの停止を避けるには、Stripeの凍結についての記事も参考になります。

PayPal Business

PayPalは独立した支払い方法としてShopifyに接続でき、外国人オーナーの会社でも承認される可能性があります。NVincの観察では、新規の販売者には売上の20-30%のローリングリザーブが設定されることが多いので、その分を運転資金の計画に織り込んでおきましょう。

その他のプロバイダー

利用できるゲートウェイは、ストアの国と料金プランによって異なります。Settings → Paymentsを開き、Shopifyがあなたのストアに提示しているプロバイダーを確認してください。導入前には、非居住者がオーナーのLLCに対応しているか、どんな書類が必要になるかをプロバイダーに確認しておきましょう。

まとめ導入前のチェックリスト

  1. 事業に米国内での実態(倉庫、オフィス、従業員)があるか。なければ、すぐに外部ゲートウェイを準備する。
  2. EINと、CP 575または147Cのレターがある。
  3. アカウント代表者がSSNまたはITINを持っている。持っていなければ、W-7を申請するか、外部プロバイダーを使うかを決める。
  4. マルチメンバーLLCの場合: 共同オーナー全員の情報と書類がそろっている。
  5. 有効なパスポートと、鮮明なスキャン画像がある。
  6. LLC名義の当座預金(checking)口座があり、名義が書類と一致している。
  7. 住所が登録代理人や私書箱ではない。
  8. 税務フォームが会社のステータスに合っていて、フォーム5472を期限内に提出している(デラウェア州LLCの税金についての記事が参考になります)。
  9. Shopifyで2段階認証を有効にしている。

要件は変わることがあり、Shopifyの公式ヘルプには外国人オーナー向けの要件の全リストが公開されていません。ご自身の状況に不安があれば、申請前にShopifyサポートに問い合わせましょう。回答までに1日はかかりますが、手動審査を何週間も待つことを考えればずっと効率的です。

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